Switch版ダビスタの悲哀

かつては競馬ゲームとして大ブームを巻き起こしたダービースタリオン。 その栄光も今やはるか昔、前作ダービースタリオンGoldが看板だけ立派なクソゲーになり果てていたことは、ダビマス振り返りのときついでに書きました。

moccos.hatenablog.com

この記事前半がダビスタGoldの現実をちゃんとまとめて書き残した数少ない記事になっています。内枠外枠の扱いがひどかったこと、オンライン対戦がまったく機能していなかったこと… そして直線でも詰まりやすいことなどを書きました。 しかし今思うと…Switch版と比べれば、Goldでたまに進路選択が気になっていたのはまだ全然ましなほうでしたね。

ダビスタSwitch不評の原因二本柱

発売直後から絶望を振りまいた今作の「まずい点」は二つありました。

  • ロードが異様に遅い
  • 直線で詰まる確率が異様に高い

当初最も目立ったのが前者、ロードが長い点でした。

施設を見に行く、所有馬リストを開く、種付けを選んでリストを見る、レースを開始する…何をするにも10秒から30秒くらいのロードが挟まる地獄仕様でした。ダビスタプレイした後は、FGOの周回が高速サクサク神ゲーに見える。2回目のバージョンアップで多少ましになり、牧場周りでは改善したのですけども。

問題はもうひとつの方です。待ち時間長くてもちゃんと遊べるなら、まあ他のことしながら進めるスタイルで楽しめるので良かったんですよ。残念ながらそうではなかった…

前壁シミュレーター

あまりにも前が詰まりすぎです。

逃げ以外を選んだ場合、18頭フルゲートだと詰まらず走れる確率は20~30%程度です。平均的に4~5回に1回しかスパっと抜けてこない。めちゃくちゃ強い馬なら直線半ばで前が空けばOKということもありますが、相当な力差がないとだめで、無事に走ればウオッカを軽く千切れる能力でもG3で二桁惨敗は普通です。

馬群制御の仕様が厳しい

ダビスタSwitchの直線での馬の制御は、おそらく左右位置はレーン管理になっています。細かい座標ではなくて、内から1列目、2列目…みたいな。

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ダビスタswitch 馬群レーン管理

そして、馬が完璧にまっすぐに走ります。 現実の競馬では馬はフラフラと走るので、じっと我慢していると前が空くこともあります。ルメール騎手がそういうの得意ですね。しかし全馬が自動車のようにまっすぐ走るとしたら?一番外にいる馬も最前列にいる馬も横移動するモチベーションがないので動かず、隙間のない完璧な壁として機能します。

直線入り口で次の図のような状況になるのですが…

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ダビスタSwitch馬群
オレンジ色の馬がわざわざ横移動することは無いので、他の馬に権利が生まれることは基本ありません…。外側から差していく馬が前後にずれると、他の馬も順々に外に出して進路を得ることはできますが、そこからようやく加速しても間に合うくらい抜けたスピードがあれば、です。これを「強い馬作ればいいだろw」と煽ってはいけません。ゲーム内で無双できる馬が出来たとき以外は、常に同程度以上の力を持った馬と戦うことになります。また、BCで戦えば高いレベルで同じようなことが起こるでしょう。

まともに差してこられるのは馬群の一番外側だけなので、差し競馬になって逃げ馬がもたない展開のときに全力で走れるのは3頭前後、それらが抜けた後に遅れながらも抜け出せる馬、内から奇跡的に抜け出せた馬を合わせて、レースに参加するのは+2~3頭といったところ。そのため、ハイペースでは外枠祭り、ミドルペースでは外枠+逃げ馬1~2頭で上位を独占することになります。 f:id:moccos_info:20210223230103j:plain

そして、もし馬群の一番外が弱い馬で全然伸びなかった場合、馬群を完全に閉じ込めて大変なことになります…。弱い馬が多い下級条件のレースで、逃げ以外どうにもならんことが多いのはそういうわけです。確率は低いですがレースレベルが高めでも起こることはあって、スプリンターズでバタバタの逃げ馬と封鎖された馬群が誰も動けずゴールして良馬場1分8秒、なんてこともあります。

根性仕様との不整合

ダビスタの伝統…あるいはノスタルジーとして、「叩き合ったら根性で大きく能力が伸びる」というものがあります。流行ってた時期のダビスタがそうだったので、それを変えられないんでしょうね。今作は地味に叩き合いの重要性がとても高いです。

ごく稀に最内をつく場合を除くと、直線で外から内へは絶対に移動しない仕様なので、一頭だけ伸びてくる差し追い込み馬はとても不利です。逃げ馬も単騎で抜け出してしまうとだいたい沈みます。最前列2頭で叩き合いながら粘る逃げ馬、最強です。これも逃げ有利へと傾ける仕様となりました。抜け出すときにちょっと並んでムチが入るだけでも大きな効果があって、弱い逃げ馬を叩き落としながら抜け出したヴィルシーナがクッソ強いのはこのせいです。

現実とゲームの不整合

現実の競馬では、逃げ馬の後ろくらいがいい位置だし、詰まらなければインコースを回ってくるのは良いレース運びです。しかしダビスタSwitchの仕様を知っていてベストの動きをさせてもよいなら、絶対にインコースには入れないでしょう。「ゲーム仕様に合わない現実的な動き」を入れてしまう、シミュレーション系のよくはまる失敗のひとつです。(そもそもゲームで前が詰まるのを再現して楽しいことはないとことを考えて欲しいが…)

もうひとつ、「上手い騎手は逃げ指示でも速すぎれば抑える」みたいな仕様が入っていますが、これもゲーム内仕様と合っていません。せっかくロケットスタートしたのに下げて、先の図でいうオレンジ位置を取れるはずが緑や灰色になってしまいます。やめてくれー。そしてペース読みも見誤っていて、逃げ指示で下げて、運よく詰まらなかったけど差し切れないというケースも多発。おそらく「素のペース仕様」だけ考えて位置を下げていて、根性で粘る部分が考慮外なのではないかと思います。結果として、おそらく最も完璧な騎乗をする設定であろうルメールが「勝ちから遠ざかる挙動を積極的にする騎手」になりました。絶対にこいつを乗せてはいけません。

副次的な不満

「レーススキップできないのが不満」。これは、直線向いた時点で詰まって敗北確定だとわかるケースが多すぎるのが問題です。負けるのが確定していたらさっさとスキップしたいし、しっかり差してくるなら見てあげてもよいのに。

「今作は難しい」。いや、そんなことないと思います。馬づくりについてはむしろ簡単かもしれないと思うくらい。ただ、過去作でG3勝てるクラスの馬ができれば2~3勝して2憶以上は稼げていたところ、今作では1番人気で10回走っても1勝・掲示板3回とか普通なので、馬の強さに対する稼ぎがとても悪いです。G1で印取れる馬だったのに終わってみればOP勝ち鞍なしで1億ちょい、なんてことは普通です。

クラブ馬として預けたときにはレースを厳密に行わず、着順はおそらく人気+多少の乱数程度で決まるので、前壁シミュレーターに泣かされずにちゃんと人気通りの稼ぎをします。重賞勝てるクラスだと2億3億稼ぎます。腹立つ。

どうすればよいのか

見かけ上「逃げ馬有利」に見えますが、そこで仕様を変えずにレースバランス調整で差し追い込みにアドバンテージを増やす…なんてことは絶対にやってはいけないことです。そんなプランナーが居たら即クビです。逃げでクソ枠を回避する道が断たれ、ひたすら枠順ガチャをするだけのゲームになってしまいます。 しっかり根本的に制御を直すほかありません。しかしレーン方式の位置管理では「ちょっとフラフラする」という挙動を自然に作ることは難しいでしょう。もうレーン管理すると仕様を決めた時点で敗北しているような気がしますし、そこから変えて作り直したら今までのバランス調整は全て無駄。ソシャゲであれば必死の改修するかもしれませんが、売ったら勝ちでそれ以上の追加利益は望めないパッケージ販売なので、修正を期待するのはかなり厳しいかもしれませんね。

他の細かい不満

前壁に比べたら些細ですが、他にもいくつか気になるところはあります。

  • 地方海外が少ないため、特にダートがつらい
    • 競馬場のモデルつくる手間はわからんでもないけど、ダート馬が冬以外やることない
  • 種牡馬が全然追加されない
    • 月イチでも追加されれば無限に遊べそうなのに…
  • 施設前提の設計になっている
    • 落鉄防止・怪我軽減・出遅れ軽減・受胎率上昇などが追加機能で、序盤は常時2頭故障休養していて不受胎は多く異様に落鉄しやたら出遅れるクソゲー
  • 配合理論の効果が地味っぽい
    • いろいろ試したがどの配合理論も手応えなく、クロス一本だけの馬がここまでの最強馬
    • …というような話をあちこちで聞く。ダビスタ3の多重クロスまでいかなくても、もう少しわかりやすい手応えがほしい

よいところも一応ある

悪いところを列挙するだけだと悲しいので、ダビスタSwitchの良いところも挙げておきます。

  • 実況がめっちゃ良い
    • 予想外になめらかにオリジナル馬を読み上げる
    • レース開始したあと他のことしてても結果がわかる
  • モーションは良い
    • 岩田康誠に代表されるペッタンペッタン追いがあるのも細かい
  • 直線のカメラアングルが良い
    • 実際の競馬っぽい、角度がついて差してくる馬が映える構図
  • 育成メモがよい
    • ついに能力メモを自前でとる必要がなくなった!自動でとってくれれば最高だったが
  • 調教師に任せたときのレース選択が距離適性をしっかり見る
    • 1600が長い馬は1600に出さないのでわかる
  • 凝った配合が良い
    • 日本はディープとKingmambo、海外はGalileoミスプロはみんなちがってみんなよい、という感じ
    • 種牡馬同じような系統ばかり!と最初に憤慨したが、これは掌を返さざるをえない
    • 全きょうだいクロスよりはるかに美しい。流石ダビスタ
  • 調教でも特性コメントをしてくれるのが良い
    • ダートや坂路、雨の日などの調教を自前ですると追加のコメントをもらえる

おまけの初心者向けアドバイス

下級条件~OPくらいで入着しながら稼いでいく序盤でのおすすめ:

  • 6枠から内は逃げしか選択肢なし
  • 7枠、8枠引いてペースが速そう、かつスピード上位の自信があるなら差し
  • 先行と追い込みは選択しない
  • ルメールを乗せない

馬群の動きがわかるようになるまではこれでよいでしょう。慣れてだんだんわかっていくと、外枠だけど先行にしたらいい位置になる可能性が高いなーというケースも読めるようになります。

逃げが不利な条件 (ハイペース、直線長い、内が荒れてる) だと枠順が決まった時点で敗北確定していることもあります。そんな都合、東京と新潟は常に避け、直線の短い競馬場を優先した方がよいですし、やや直線が短くて内荒れも起きないダートを選んだほうがよいです。 そして出走頭数が何頭でも「まともに走れる馬の数」はあまり変わりませんので、出走頭数が少ないレースを選ぶことも大事です。

逃げと先行はハイペースのとき不利ですが、逃げと先行で直線入った位置が5馬身以上変わってくるので、圧倒的な詰まり率の差も含めて考えると、先行にした方がよいケースはあまりありません。差しと追い込みはハイペースのとき有利になりやすいですが、差しは馬群の外をキープしやすいのに対し、追い込みは大外に回れるケースを読むのが難しいです。

さらに

  • ズブいコメントが出た馬
  • 根性(上から2番目)だけつかない馬

こいつらは実力よりはるかに下の結果しか残さないので、人気で惨敗を繰り返し始めたらさっさと諦めて引退させてしまったほうがストレスなく遊べます。