一口馬主を皮算用からはじめる
競馬は観戦と馬券のみで27年くらい楽しんできましたが、ここ数年馬券に飽きてしまったかわりに、ついに一口馬主に手を出す気分になりました。 どうせやるならもっと若い頃からやっていれば…と思わなくはないですが、過ぎたことはどうしようもない。これからの人生のなかで今この瞬間が一番若いのでベストタイミングということで。
ゲームとしての一口馬主
一口馬主の情報管理に無料でそこそこ使えるサイトには、一口馬主DB や netkeiba.com があります。 そしてそこには、獲得賞金額を募集額で割った値=回収率 という指標がでかでかと掲げられることになります。
一口馬主ライフを客観的・定量的に評価するものとして、回収率がひとつの基準になるようです。 もちろん「名誉」として大レースを勝つ、「ファン活動」として応援することを楽しむというのもありますが、それらは(重賞に届かない大半の馬は)簡潔な数値化が困難です。
収支の皮算用
「回収率」はひとつのゲームルールでありますが、投資金額による回収率からはかなり離れたものになります。 なぜなら馬はメシをばりばり食うし、人が手塩にかけて育てて鍛えるし、高度な医療も受ける。維持費の存在です。
東サラでは400口募集の1口あたり月1500円、DMMバヌーシーでは1/2000で月300円回収されるようです。1口あたりでは同じレートですね。 最初に入会したノルマンディー1/400では実費でここまで、入厩前で900円くらい、入厩後で1500円弱です。 ざっと 1/400あたり 2歳の6月まで1000円、それよりあとは1500円で計算することにすると…
- 2歳1月~3歳9月までで 1頭 1140 万円 # 未勝利引退コース (6000 + 22500) * 400
- 2歳1月~6歳3月までで 1頭 2700 万円 # 原価償却コース (6000 + 67500) * 400
- 入厩後1年あたり 1頭 720万円 # 18000 * 400
が乗ってきます。多めに集金してしまった分はあとで清算されて返ってくるんでしたっけ。でも保険料やら月会費やらもあるので、ざっくり上に切り上げてこんなもので。
未勝利引退を前提に収支計画を立てる人はいないと思うので減価償却コースで考えると、
- 獲得賞金 / (出資金 + 2700万)
が額面上の収支に近くなるということですね。400口募集馬の1口では 出資金 + 73500円 くらいで割る。
出資金 | 維持費込み(6歳3月) | 目標回収率(維持費込み) |
---|---|---|
1350 | 4050 | 300.00% |
2700 | 5400 | 200.00% |
4050 | 6750 | 166.67% |
5400 | 8100 | 150.00% |
6750 | 9450 | 140.00% |
8100 | 10800 | 133.33% |
9450 | 12150 | 128.57% |
さらに、賞金はもろもろ引かれて7割くらいが手元に来るので…
出資金 | 維持費込み(6歳3月) | 目標回収率 (実収支目安) |
---|---|---|
1350 | 4050 | 428.57% |
2700 | 5400 | 285.71% |
4050 | 6750 | 238.10% |
5400 | 8100 | 214.29% |
6750 | 9450 | 200.00% |
8100 | 10800 | 190.48% |
9450 | 12150 | 183.67% |
こう考えると、2000万を切る価格帯では出資金が全体に占める割合はかなり少なくなります。すごい安い価格帯の馬は、回収率という数値を競うゲームをするのであればありかもしれないけど、収支を考えたら見た目の回収率との乖離が大きくなります。7000万の馬は200%で本当に回収できるけど、1400万の馬は400%でも赤字! 安い価格ほど、一度たりとも勝負にならず終わる可能性は高く、上級クラスでの活躍や繁殖入りの可能性は低く、数値以外の観点でも不利…。
安い馬に有利なハンデがルールにしたほうが盛り上がるだろうから、回収率という値を大きく見せるようにコミュニティルールを生成した人たちは上手ですね。
余談: DMMバヌーシー一括払いから見る現実
アイワナビリーヴという馬が1勝クラスにいます。昔DMMバヌーシーが一括払い方式で募集していた年代の馬でした。一括払いとは、6歳3月までの維持費やら会費やら込みでどかんと最初に払う仕組みです。
この馬の2020年11月時点での回収率は、画像を例示した一口馬主DBでは14%、対してnetkeibaでは119.8%です。 一口馬主DBではなぜか一括払いの全費用合計(1億円)に対して回収率を算出。netkeibaではちゃんと他馬と同じ計算、競走馬出資金(1200万円)に対して回収率を算出しています。
ゲームのルールとして119.8%となるものが、実際の収支では14%になるのか!
これに割と衝撃を受けて、実費の計算をする気になったのでした。そういえば、「オークス買ったのに元が取れていない」と言われることのあったラヴズオンリーユーも、出資金だけで割る一般的なルールに従えば元はすでに取れています。一口馬主DBの中の人、バヌーシー嫌いなんですかね。