2011年 ドバイワールドカップを日本調教馬が制覇

2011年3月26日深夜、あるいは27日早朝。今まで先頭を争うことのなかった日本馬が、なんと1・2着を独占するという快挙を成し遂げました。終始先頭で引っ張ったトランセンドが粘りに粘り、道中でいい位置を取ったヴィクトワールピサがそれを差してゴール。昨年の凱旋門賞では絶叫したものですが、このレースでは「あれ?このまま勝っちゃうんじゃないの?あ、勝った」という感じで…勝つときは意外とあっさりしたものですね。
デムーロが喜んでいる姿、関係者の絶叫を見ていて、ようやく実感が沸いてきました。


Results | Emirates Racing Authority
http://www.racingpost.com/news/horse-racing/dubai-festival-meydan-meydan-transcend-world-cup-japanese-1-2-as-victoire-pisa-triumphs/834248/top/
BBC Sport - Horse Racing - Victoire Pisa wins Dubai World Cup as Twice Over fails


結果が最高であるのはもちろんのこと、勝ち馬であるヴィクトワールピサが、ディープインパクトのような「国内で飛びぬけた最強の存在」ではないのは、日本競馬にとって心強いことです。馬場や展開次第で、少なくともブエナビスタローズキングダムとは勝ったり負けたりという関係であるはず。ちゃんと走ったときのナカヤマフェスタと当たっていませんが、それにトランセンドまで合わせて6頭は同等の馬がいるわけです。もしかしたら、レーヴディソールも秋頃には加わっているかもしれません。

ヴィクトワールピサ

3回目のレースリプレイを見るまで、この馬が序盤にどこに居るのかわかりませんでした。バックストレッチで一気にまくってあの位置を取ったのはわかっていましたが、なんと最後方からスタートしていたんですね。加速して望みの位置で止まれる自在性・折り合いがブエナビスタに対する、あるいはトランセンドを差しきれなかった他の全ての馬に対するアドバンテージであり、この前残り競馬で最高の結果を残すことに繋がりました。海外の中長距離レースに出ると、日本馬はどうしても道中のスピードで勝って自爆しがちなので、折り合いは重要になってきますね。

トランセンド

スタート直後から迷わず先頭へ飛ばしていくシーンは(ピサの位置確認をうっかり忘れるくらい)格好良かったし、直線ピサに完全にマークされながらも全然止まらない、北米血統のイメージそのままの走りを見せてくれました。道中なぜかナナメを向きながら走っていたのに、よく走りました。

ブエナビスタ

一番期待されていたブエナビスタですが、自分から動けない弱点がそのまま出てしまいました。今まで道中に自分から動いたことはなく、折り合いに苦労する馬でもなさそうなので、本当に動けない馬なのかどうかもわかりませんが…。スタート後から直線半ばまでずーっと、内に行くか外に出すかふらふらと迷っていて、目もあてられない。直線を向いた時点で、ああもう上位はないな、と見限らざるを得ない状態。スローペースなので前も止まらない。
このレースでは残念な結果に終わりましたが、次以降のレースではまた強いブエナビスタを見せてほしいものです。中山・阪神ではどうもぱっとしませんが、東京・京都では相変わらず最強であるはずです。

オールウェザー

ダート開催では、キャプテンスティーヴから3馬身差の2着が精一杯、つまりとても勝ち負けのレベルまでは到達できていなかった日本陣営。これがなぜかオールウェザーになったのは追い風となりました。昨年レッドディザイア程度で本番の上位馬をごぼう抜きしてしまっているように、日本馬のなかに高い適性を持った馬がいるようです。レッドディザイアの切り拓いた部分はとても大きい。
また、日本で芝を走っていた馬の陣営にとっては「ダート」という字面ではなく挑戦しやすくなったこと、逆に、北米の怪物クラス(BCクラシック組)が狙いに来なくなったことも幸運でした。

芝馬かダート馬か

今年は、もちろん日本馬の悲願達成なるかという面は例年通りにありましたが、それ以上に「ダート路線のトップと芝路線のトップが同じレースを走る」というドリームレース。オールウェザーのレースに対してどちらの路線から遠征すべきかを見極めるという面でも重要なものでした。結果は、日本芝路線のトップと日本ダート路線のトップが鼻面合わせて叩き合い1・2着、という最高のもの。


中山や重馬場もこなせるヴィクトワールピサが実はダートもいけるとか、北米系のトランセンドが実は芝も走れるとか、そんな可能性は血統的に有りえる範囲内なので、来年以降の結果にも注目しないといけません。しかし、本当に芝馬もダート馬もいけるコースなのであれば、JRAにもオールウェザーコースを!という流れは出てくるでしょう。
日本芝路線と日本ダート路線の混合のほかに、海外馬が走りやすくなる(かもしれない)ところも期待されます。日本の高速芝コース(特に東京と京都)、もっさりしたダートコースともに、欧州の芝馬にも北米のダート馬にも走りづらいコースであり、実績を残しづらいので登録も少ないのが現状でした。制度上開放していても、なかなか来てくれない。そんな状況を打破する可能性も秘めたコースかもしれません。

そして次の目標へ

ドバイワールドカップはWorld richest raceといちいち説明がつくことが多く、賞金最高額だけども、世界の頂点と断言できるかというと微妙なところです。昔のジャパンカップほどではないにしろ。やはり頂点は秋、芝の凱旋門賞かダートのブリーダーズカップクラシック、となるのでしょう。
今年はもしかすると、凱旋門賞にはドバイワールドカップの勝ち馬と昨年の2着馬、というメンバーで臨む事が出来ます。これだけ海外実績を積んでの挑戦は、サンクルー大賞の勝ち馬で挑んだ1999年以来。秋も結果を楽しみにしたいですね。