ブルーライトカットの効果に関する調査と製品比較(JINS/Zoff/他)

昨今話題のブルーライトをカットする眼鏡について、そろそろ購入してみようかと考え、仕組みと現状製品の調査をしてみました。

ブルーライトについて

ブルーライトの発生源として槍玉に上がっているのが、液晶ディスプレイのバックライトに使われる白色LEDgoogle:image:白色LED 波長 で探すと、それっぽいグラフがたくさん見つかります。
実際に液晶ディスプレイを計測した結果をまとめた記事もありました。 JINS PCは効果があるのか? 編集者が使っている液晶モニターで「ブルーライト」を計測してみた (2/3) - ITmedia ビジネスオンライン

以下の図はhttp://japan.maximintegrated.com/app-notes/index.mvp/id/3070より。

実線は白色LEDのスペクトルで、青色LEDに起因する山が450nm付近にあり、黄色蛍光体のなだらかな山が黄色近辺の波長にあり、合わさって白く見える原理です。破線が人間の受容体感度で、青は感度が低いためこれでいい感じに見える、ということのようです、
ブルーライトなどというと、得体のしれない何か身体に悪そうな何かが出ている印象を受けますが、要するに「白色LEDは青だけ強い光が出ている」ということですね。他の色は蛍光体により、黄色近辺の広いエリアの光が混ざっているのに対して、青はLEDの光そのもの。

表示方式の異なる場合

有機ELやプラズマ、ブラウン管の場合は、白色LEDで後ろから照らす仕組みではないです。ただ、発色原理が違っても、「青色は眼の感度が低いため、白を出すためには強く出さなければならない」とすると、同じ原因による疲労があってもおかしくないかも。このあたりは疲れる原理・カットする原理のどちら視点でもよく理解できていないところです。

(2012/10/30追記) 短波長は吸収されずに眼の奥の方に届くみたいな話があるようです。

カット効果の有無

効果の実証を行ったデータは、目につきやすいところではJINS PCに200人クラスの調査結果が載っています。絶対値はともかく効果はありそうだ、という程度のデータです。

懸念は2点。商品を売ろうとしている人たちの調査であることと、液晶の輝度を下げた場合(あるいは単なるサングラスのようなものを使った場合)との比較がされていないことです。結構長い方の波長までカットするので、結果として全体的に暗くなるはずで、そっちの効果が出ている可能性も。
本当は、海外の論文を複数漁らないといけないのでしょうが、現時点で自分がどうするかという方針は決められたので(後述)、そこまで頑張りませんでした。


ところで、既に実際着用してみてどうこうという使用感を書いたブログや記事があると思いますが、そんなのは大した役には立たないでしょう。プラシーボ効果が十分効いてしまうので。Zoffの製品トップにでかでかと掲示されている電話調査結果も同様です。
JINSの実証は、被験者を半々に分け、半分には効果のない偽物を用いているので、そこの最低ラインはクリアしています。

JINSZoffを比べてみよう

製品紹介ページは以下。

カット率のグラフを並べてみましょう。

重ねて*1、ついでに450nmに線を引きました。

手書き感溢れるグラフでとてもとても不安ですが、これしかデータがないので、比較するには信じるほかありません。
「カット率」として記載される値は、380-500nmの値のようですが、敵は450nmにあり。他の数値は不要です。どこを見ても50%なんてカットしてませんよね。紫外線近辺の無意味な値を混ぜているからでしょうか?UVカット自体は良さげですがそれはまた別問題であり…。
とにかく450nmに注意してみると。

  • JINS PCもZoff PCもあまり変わらない

JINSZoffか迷ったら、見た目と値段で選べばよさそうです。


Zoffのグラフにちらっと書かれているT7333は、Internet上でも閲覧できました。

(2012/10/30訂正)ブルーライトは付属Bの表にあり、説明はCですね。見落としていたらしい。正確には各波長に指定の重みを掛け算でしょうが、LEDバックライトは出力波長が450nm近辺に偏っているので、そこのカット率を見るのでまあ大丈夫かと。「リスクの有無については意見が分かれている」とされていてやっぱり不明。

真のカット率

数値に出るのはターゲット波長帯の絶対的なカット率ですが、実際意味があるのは、長い方の波長と比べた場合の相対値です。理想をいえば、青以外はカットしない方が嬉しい。上のほうまでばっさりカットしてしまうと、全体が暗くなるため、同じ見た目を得るために輝度を上げる必要があります。そうすると青色出力の絶対値も増してしまうので。

  • クリアタイプは、JINSZoffも10%程度のカット率
  • 色つきタイプは、590nm(黄色)あたりとの比較で12〜15%程度のカット率

色つきの方が効果が高いものの、あまり変わらない気が!
見た目が気になるなら、天秤にかけるほど効果の差はなさそうなので、クリアタイプでいいんじゃないでしょうか。赤色エリアとの比較だと、もうちょい差は開きますが。

ひとつ気になるのは、Zoffの色つきは緑あたりまでがっつりカットしているように見えることです。色つきタイプに関しては、JINSの方が好印象。

どうしようか?

ここまで眼鏡で解決しようと悩んできましたが、光線をカットする箇所は他にもあります。使うディスプレイが少数・大きくないという条件を満たすならば、画面側に貼ってしまえば眼鏡から解放されます。
例えばこんなの。

【2012年モデル】ELECOM iPad 2012 保護フィルム ブルーライトカット TB-A12FLBLG

【2012年モデル】ELECOM iPad 2012 保護フィルム ブルーライトカット TB-A12FLBLG

ゲーム機用、ノートPC用、携帯電話用など、色々あるようです。

見つけたものをいちいち貼ってると埋まってしまうので、こんなところで。
携帯電話やノートPC、ゲーム機などには良さそうです。寝るまえに布団でいじるときに眼鏡はかけたくないですよね…。
大きなディスプレイに大しては、フィルタの値段が眼鏡の値段より高くなってしまいそうなので、今後も眼鏡で対処するのが良いのではないかと思います。


画面に貼りつけるフィルタ類を見ていて気になったのが、その性能。あるエレコム製品には、こんなグラフがついていました。

おう…。圧倒的に眼鏡タイプより性能が高いように見えます。40%以上いけてそうな。
また、他の波長を阻害しないところが売りになっているあたり、眼鏡タイプよりも市場あるいは製品として、何段階か成熟しているように見えます。このくらいの性能の素材が既に製品化されているのなら、眼鏡ももうちょい頑張れるのではないでしょうか?

出力側の工夫

仕事がプログラマや事務などで色に拘らない場合は、表示側で青を落とすという手段がシンプルかつ効果的かもしれません。
(この方向性をもったネタスライドがありました → HTML5 Conference [LT] Blue Light Filter 50% Off

結論

  • 効果の有無はまだ明確ではない
    • 輝度を落としただけの場合との比較が欲しい
  • 効果があるとして、もっと高性能な製品が期待できそう
  • 原理上、画面側にフィルタを貼っても効果は同じ
    • 画面フィルタ製品の方が現状は高性能
    • 眼鏡は取り回しが大変

当初、どの製品を買おうと迷うところから始まって色々調べてしまいました。結局、そっと製品画面を閉じました。
買うにしても、もうちょいスペックの良さそうなものが出るのを待ちたいし、自分は(GUIから遠い)プログラマなので、職場はきもち青を落とす方向で対処しようと考えています。そして寝る前に触る携帯とゲーム機には、画面にフィルタを貼ろうかな、と。

*1:横軸の引き伸ばし方も含めて、ドット単位で拡縮なしでピタリと重なる…。(変なことを気にするのはやめよう)