ギャロップレーサーの墓標、チャンピオンジョッキー

Playstation初期、ダビスタと同じような時期に栄えていたギャロップレーサー。人気もダビスタと同じように(より小さなスケールで)鎮静化していき、オンライン化した後に消滅していました。すっかり忘れた頃になって、吸収された先のコーエーテクモから「Gallop Racer」の名を冠したゲームが出現。

Champion Jockey: Gallop Racer & GI Jockey | Official Site

チャンピオンジョッキー ギャロップレーサー×ジーワンジョッキー。この長いタイトルのために、ビックカメラで予約票記入するお姉さんがとてもイラッとしていました。そんなことはどうでもいいんですが、とにかくギャロップレーサーというサブタイトルが付いているので、チェックしないわけにはいきません。

ゲームモード概要

  • 新人騎手としてデビューし進めていくストーリーモード
    • 特定条件を満たすことで乗れる馬が増える
    • 競走馬の育成モードあり
  • レースだけを楽しむレースモード
  • オンライン対戦モード


大まかに分類すると3種類です。しかし、初期状態では選択できない馬(いわゆる隠し馬)を増やすためには、ストーリーモードを進める必要があります。また、興味が一切ないので以後は触れませんが、育成のためにもストーリーモードを進める必要があります。もちろん、実績(トロフィー)を集めるのには、ストーリーモードの進行は不可欠です。つまり、全要素の7〜8割くらいがストーリーモードに詰まっています。

レースの仕様

なんとこのゲーム、後方で脚を溜めてもスピードにボーナスがありません。先頭から離された位置で直線を迎えるのに見合うほどの価値がないのです。殿一気や直一気などの、後方からでないと発動しないアビリティがあるので、差し馬はそれで一瞬加速する分だけを頼りにレースを進めることになります。後方系アビリティがどの馬にも付いているのはそういうことか…。
しかしアビリティの加速で十分交わせるのは条件戦くらいで、基本的には行けるだけ前に行くことになります。序盤はこれに気付かず、クエストモードでシーザスターズザルカヴァなどの世界最強クラスの差し追い込み馬で、何度となく取りこぼしていました。前方から出せるアビリティのない馬は、単純にそのぶんだけ不利です。

本当にジョッキーゲームを作ってしまった

ジョッキーゲームなのに「オート騎乗」が出来ることが、このゲームの姿勢を明確に表しています。レースよりも、ライバル騎手や厩舎の人間との人間関係の表現に注力しています。


ギャロップレーサーの場合、プレイヤーと競走馬の関係はシンプルかつ一方向でした。


チャンピオンジョッキーでは調教師が挟まり、思い通りになりません。適性や友好度など様々な理由で、提案を拒否される(または、提案すらできない)というルートが存在します。


結果として、興味のない馬に乗ってレースをさせられるケースが大半を占めます。お手馬ですら、ローテーションや引退を自由に決定できません。目当ての馬に乗るためには、管理調教師と交流があることが最低条件。新馬戦でお手馬にして2戦目からローテーションに口を挟みたければ、ある程度友好度も上げないといけません。
めんどくさい!超めんどくさい!

レース中の視点

レース中の視点移動に制限があるのは、とても残念な点です。追っている間に視点を変えられないため、ゴール前は基本的に自分しか見えず、着差も迫っている馬がいるかどうかもわかりません。ここが一番熱くなるところなのに。レース仕様の単調さ(バテなければ差されない)に負の相乗効果をもたらしています。
野球ゲームに例えるならば、攻撃側の走塁視点がランナーの前方固定で、送球されているかどうか・間に合いそうかどうかが一切わからないような構造。それをリアリティと呼び売りにしたいのでしょうか? 競馬でも他のスポーツ中継でも、普通の人のリアルな視点はテレビ中継のカメラ視点であり、あの表示が出来るという特徴は重要だと思います。プレイヤー視点こそがリアル!というFPSのようなゲームデザインがあっても良いとは思いますが、あれはTV中継視点に慣れ親しんでいるわけではありませんw

ギャロップレーサーのエッセンスは何処へ?

騎乗スタイルでの区分を見るに、制作スタッフの理解は「ギャロップレーサーは操作が簡単なので低レベルだが、エフェクトだけ派手」という程度なのでしょう。レースシーンを見るとそう思うかもしれませんが、ギャロップレーサーの場合はレースを楽しむための工夫がいくつもありました。

  • 面倒な人間関係の表現は無いに等しい
  • 雰囲気を大きく損ねる架空馬は出さない(ゲームコンセプトとは別問題で、実名を使用できない時期はあったが)
  • 条件戦?なにそれ?楽しくないならいらないよ


チャンピオンジョッキーで一番まずいのは、条件戦の存在です。面倒な作業が多いほどリアルだと表現するのは光栄ファンだけだろ…(ああ、これは光栄のゲームだった)。
次に引っかかるのは、架空馬。実在馬では頭数が足りない部分を埋めるために、主に条件戦で出走してくる、冠名+適当な名前の付いた馬たちです。OP戦でもそこそこに居ます。これも非常によろしくない。


ギャロップレーサーでは実在馬のみだったので、レース中に回りを見回せば、勝負服でどれが誰だか認識できていました。実在のライバル馬相手のレースに溶け込んでいることが重要です。でも、架空馬を大量に出されるとどうしようもない。
おそらく企画の上の方の人が、競馬ファンではないのでしょう。競馬ゲームについては知っているかもしれないが、競馬を普段から楽しんでいるわけではない。

オンライン

ゲームのルールを理解し、最低限乗れるようにしてからオンラインに出ようなどと思っていたら、あっというまに過疎っていました。何回か対戦してみたら、その異様なクオリティの低さに愕然。


最大4人までしか対戦できない!
しかも8頭立て!
接続エラーが出たらソフトウェアリセット!


ギャロップレーサー7(2004年)のオンラインは12人対戦で、実在のものを基本としたレース番組が用意されていて割とサクサク進行でき、それなりに栄えていた記憶があります。チャットやレース中の吹きだし(台詞)設定なんてのもあったような。そのレベルを遥かに下回るようなものを、今更出されるとは思いませんでした。
さらに操作性や、対戦ゲームとしてのインタフェースもぼろぼろです。誰かが対戦用のルームを立てていないか検索する際に、検索条件の初期状態で絞り込み無しになっていなくて「芝短距離」が選択される怪しい仕様、しかも検索に失敗するたびにその条件に戻ります。最低限のテストプレイすら行っていないのでしょう。
そもそも「基本的に差せない」というゲームの仕様のせいで、レースが単調です。根幹のゲーム部分が、オンライン対戦に耐えられるバランスに達していませんでした。

総括

ギャロップレーサーの長所は一切無くなった、ただの面倒なゲームです。オフにも出来る微妙な扱いであったレボリューションの仕組みだけ、何故か引き継いでいますが。
さらに、ゲームのコンセプトとは別の問題として、各所に「クオリティの低さ」が散見されます。「続きタイトルものだから本数がそこそこ出るし、気楽にやってみたら?」とか言われて、新人か三軍部隊あたりが担当しているのでは?競馬についてもネットワークについても、一軍はウイニングポストソーシャルゲームに出払っているのではないかと。この予想が買い被りで、コーエーテクモだとそれなりの部隊が作ってもこんなもんだろ、という可能性もなくはないですが…。


チャンピオンジョッキーは、馬を操作することがメインのゲームではありません。その周りの人間ドラマやらなんやら、めんどくさくてリアルですね!!ってあたりを楽しめる人向けのゲームです。爽快さを楽しみたいプレイヤー、好きな馬でレースを楽しみたいプレイヤーにとっては耐えがたいものでした。
次回作がもしあるとしても、もう長いタイトルは必要なく「チャンピオンジョッキー2」となるでしょう。そういう意味でも、またゲームの内容的にも、ようやく「ギャロップレーサーはもう新作が出ることはないんだ…」という、諦めのついた作品です。