なぜ高額転売を規制できない理由が主催側にあるのか #転売NO

先日のエントリ 「なぜ転売反対声明は白々しいのか」 の続きではありませんが、関連の話です。

高額転売反対声明は、ハッシュタグ#転売NOや「転売問題」というタイトル、tenbai-no.jpというドメイン等々により、転売撲滅的な勢いでファンを引き付けようという狙いは感じますが、実のところ転売がないと成り立たないような売り方をしている…というのは先のエントリに書きました。声明を出した側からすれば高額転売反対NO・転売YESとできれば万々歳なわけです。

しかし、高額転売だけの規制は難題で、さらにその大きな原因は一部の主催者にあります。

どこからが高額転売か

誰でもまず思いつくルールは、「定価より高く売ったらアウト」。すなわち、高額かどうかのラインを定価に引くというものです。それでうまくいけば簡単なのですが、これを不可能にするのが円盤つき応募券商法です。販売時の名目としては、音楽CDだったり、アニメのブルーレイディスクだったりします。

さて、額面7000円、応募のために積んだ円盤がチケット1枚あたり10000円分だとして、妥当な転売価格はいくらでしょうか?7000円ですか?あなたなら知らない人に7000円で喜んで売れますか?

もはや定価制限にまったく妥当性がないことは明らかです。定価、使えません。何倍ものお金を「公式に」払わせて売ったチケットに対して、価値の何分の一かによる制限をかけようとするのは、暴力です。応募券商法とはまったく噛みあわないのです。一般のオークションでの定価制限をもし実現できたならば、オークションに流れるのを待てば、公式よりずっと安く買えることになります… そんな市場が成立するわけがない。

取得費用=妥当な転売価格はどれくらいになるのか

円盤応募券で、安心して当選できる枚数を買うための費用が何万円にもなることは時々あります。BD5枚を越えてしまうこともあります(ラブライブとかDOG DAYSとか*1 )。応募者全体の典型的なケースでそれくらいの必要購入枚数、ということは、運が悪く通常の3倍4倍のコストがかかってしまう人もそれなりに出ます。一例として今年のラブライブ東京ドームでは、二桁枚購入での全滅はちらほら見られました。5万とか10万とか出して全滅するんですよ…。この場合大雑把に、チケット1枚の取得実費用5万円くらいは、妥当な転売価格として認められるべきです。それどころか、ほんとうに10万かかってしまった人が出品するならば、10万の値段を付けて文句を言われたら泣いてしまいます。「この場合」と書きましたが、個々のチケットがどういう状況か判断して妥当範囲を定めるのはおそらく不可能でしょうから、やるにしても一律な基準となるのでは。このくらいのマージンがあれば、転売目的の人も十分利益目的の取引ができます。何十万円もの超高額案件くらいは弾けるかもしれませんが…。
転売目的で大量に買うと、大外れがなくなるのも強みです。平均取得費用2万円でも、1枚取ろうとして5万円かかってしまう個人は出ますが、これが10枚20枚になると、個々のばらつきが相殺されてだいたい期待値に近い価格で取得できるようになります(参考:大数の法則)。「不運な個人」の取得費用が市場取引価格として認められるのであれば、平均的な取得費用近辺でチケットを集められる転売業者にとっては十分です。応募券商法は、個人の購入者ばかりリスクが高くなる仕組みでもあるのです。

一部の集団のために業界全体が負うリスク

「定価のほかにかかる妥当な費用」が大きいチケットがあるために、定価による制限を機械的にかけることが出来ないとなると*2、対応は難しくなります。額面以外にかかるのが手数料程度であれば、定価の1.2倍くらいまではOK、のようなラインを引くことも可能でしょうが、応募券商法はもう全くダメ。誰も妥当な価格を判断できません。チケットを売った側にすら、各個人がいくらかけたのかはわかりません。
一律に制限できないのであれば、個別チェックをするための多大な費用がどこかから湧いてくるのでなければ、一律に制限無しということになるでしょう(=すなわち現状の姿)。応募券商法をする団体が存在するがゆえの悪影響を、そうでない方法でチケットを売っている人たちまで受けている形になります。

まとめ

  • 応募券商法をする集団がいる限り、高額転売の一律規制は難しい

最後に…諸悪の根源でありながら平然と賛同者に名を連ねるアニサマラブライブの運営が全く理解できません*3。彼らこそ、真っ当にチケットを売っている他の連名アーティスト、悪影響だけを被るアーティスト達に、額から脳味噌流すほど土下座すべき存在であるのに、です。応募券商法をする団体は少なくないけれども、なぜお前らは正義の主張みたいなものに参加しとるんじゃ…

*1:ちなみにDOG DAYSのBDはソフマップに売ったら100円だった

*2:定価で機械的に制限をかけることすら、タダでやってくれとは言えない手間のはず

*3:念には念を入れて注釈を書いておくとコンテンツもファンも悪くない